東京都議会平成26年第3回定例会 本会議録〔速報版〕− ヘイトスピーチ対策への論議の抜粋

東京都議会の本年度第3回定例会会議が、9/17から開催されています。その中で私たちの運動に関わる議員の発言をピックアップしました。

9月17日には、舛添都知事の所信表明がありました。全文はこちらに掲載されています。
http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/HATSUGEN/SHOUSAI/30o9h100.htm

東京都のビジョン、2020年のオリンピックを見据えた政策に引き続き、「都市外交の新たな展開」と題した章のなかで、ヘイトスピーチについて触れられています。以下抜粋です。

〈ヘイトスピーチ〉
朴槿恵大統領との会談では、ヘイトスピーチに対する懸念も共有いたしました。「表現の自由」が憲法で保障された重要な権利であることは論を俟ちませんが、特定の国民や民族に対して憎悪と敵意の感情に満ちた侮蔑的な言葉を浴びせることが許されていいはずがありません。しかし、この問題への対応は東京だけでは限界があります。安倍総理にもお話しし、総理の指示の下、対策の検討が始まっております。民主主義、自由、そして基本的人権という価値が共有されない社会に明るい未来はありません。政府とも協力して、人権意識の普及啓発に努めてまいります。

ヘイトスピーチを明確に否定はしていますが、東京都としての対応としては、残念ながら「人権意識の普及啓発」という表現にとどまっています。

9月24日-25日には、各会派の代表質問が行われています。以下、抜粋を続けます。

9月24日 自由民主党 村上英子氏
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/proceedings/2014-3/02.html#01

 私が知事に、このようなことをあえて申し上げなければならないのは、この間の幾つかの懸念材料が提起されたからです。
 一つは、朝鮮学校の補助金交付再検討を示唆するかのような発言です。
都は、平成二十二年に予算計上していた補助金凍結を決めて以来、二十五年に補助金不交付を正式決定するまで、多くの議論と緻密な調査を積み上げてきました。北朝鮮による拉致、核、ミサイルの諸問題が、いまだ解決されない現状にあって、こうした発言は都の姿勢を問われます。
 折しも先週、都庁舎は、北朝鮮に拉致された日本人を奪還する決意を込めて、美しい青色にライトアップされました。いうまでもなく、これは拉致被害者救出の象徴であるこのブルーリボンの青色です。安倍総理は、拉致問題をみずからの手で解決すると明言しているように、対話と圧力を駆使しながら、ここへ来て日朝交渉を加速させています。都議会自民党は、長年にわたって都議会拉致議連の活動をリードし、本問題に精力的に取り組んでまいりました。それは、政府認定及び警察が判断した拉致被害者の中に、東京都関連の方が四人、また、拉致の可能性を排除できない特定失踪者が四十七人も含まれている。まさに東京の課題と認識しているからにほかなりません。
 そこで私は、この代表質問の冒頭、まず知事に、我が国の主権と国民の人権をいまだじゅうりんしている北朝鮮による日本人拉致についての見解と、今後、拉致問題解決にどのように取り組んでいくのか、決意をお伺いいたします。

舛添都知事の答弁

 北朝鮮による日本人拉致についての見解と問題解決に向けた今後の取り組みについてでございますが、北朝鮮による拉致は、我が国の国家主権の侵害であると同時に、国民の生命と安全を脅かす重大な人権侵害でもあり、拉致問題の解決は、我が国の外交上の最重要課題であります。
拉致被害者の方々が置かれている状況や、一日千秋の思いで肉親との再会を待ち望む高齢となったご家族の切なる思いを察すると、もはや一刻の猶予もございません。
 また、東京にも四人の拉致被害者と、拉致の可能性を排除できない多くの特定失踪者の方がいらっしゃるわけであります。拉致問題は、国全体の問題であることはもちろん、都にとっても重大な問題であります。
 北朝鮮の特別調査委員会による再調査が行われている今、拉致問題は、全面解決に向けた最大の勝負どころを迎えております。都民の生命と財産を守る知事として、全ての拉致被害者の一日も早い帰国が実現するよう、安倍政権には、対話と圧力の姿勢による外交努力を尽くすことを求めてまいります。
 都としても、今回初めて都庁舎をブルーリボンカラーにライトアップするなど、都民向けのさまざまな啓発活動を行ってまいりました。
 今後も引き続き啓発活動等により、拉致問題解決に向けた機運を高めるとともに、家族会、救う会及び調査会等と連携し、早期解決を目指し、拉致被害者奪還に向けた国民運動の一翼を担いつつ、断固たる決意で国を後押ししてまいります。

(朝鮮学校への補助金交付再検討については答弁なし)

9月24日 公明党 高倉良生氏
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/proceedings/2014-3/02.html#02

 次に、人権問題への対応について質問します。
 知事は、北京やソウルを訪問し、人的交流を深めることにより、お互いの心の壁を取り除こうと精力的に行動されました。ソウルからの帰国後は安倍総理と会談し、社会的な問題となっているヘイトスピーチに対する国の対応を求めました。早速、与党内で検討が開始されたことを評価いたします。
 一方、国連は日本に対し、外国人としての尊厳を傷つけるような発言を許す風潮があると指摘し、七月に国連規約人権委員会で差別的な対応に対する禁止要請を出し、続いて八月には、国連人種差別撤廃委員会でも対処勧告を出しており、国際社会からも今後の日本の対応が注視されているところです。
 こうした状況を考えると、都としても人権啓発に積極的に取り組み、国内はもとより、国外に対しても都の人権に対する姿勢をアピールしていく必要があります。その一つとして、例えば、今後、人権に関する都市宣言を発信するなど、人権の分野でも先進都市を目指すべきです。
 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック大会で、東京は、国籍や人種を超えてさまざまな方々を受け入れるわけであり、人権を尊重する社会なくして大会の成功はありません。外国人の人権擁護に向けた決意と人権啓発の取り組み強化について、知事の所見を伺います。

舛添都知事の答弁

 外国人の人権擁護に向けた決意と人権啓発の取り組み強化についてでございますが、ある特定の国籍の外国人を排斥する趣旨の言動、いわゆるヘイトスピーチは、一人一人の人権が尊重され、豊かで安心して生活ができる成熟した社会を実現する観点から、あってはならないことだと考えております。
 オリンピック憲章では、人種、宗教、政治、性別、その他の理由に基づく国や個人に対する差別を禁じており、外国人の人権が尊重されないようでは、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会を史上最高、世界一の大会にすることはできません。
 一方、表現の自由との兼ね合いなどから、ヘイトスピーチの規制は、一地方自治体ではなく、国全体で取り組むべき課題であります。安倍総理にもお話し申し上げましたが、総理指示のもと、早速対策の検討が始まっております。
 都みずからも、人権週間を中心に「広報東京都」等さまざまな媒体を活用するとともに、国や区市とも連携し、外国人の人権尊重に向けた啓発活動を一層強化していくことで、多文化共生社会を実現するよう、全力で取り組んでまいります。

9月24日 日本共産党 畔上三和子氏

 都議会第二回定例会の中で発せられた女性への人権侵害やじ発言、そして、政務活動費の使い方などをめぐり、地方議会への批判が広がっています。都議会のあり方も厳しく問われています。質問に先立ち、この問題について発言します。
 まず、女性への人権侵害やじ発言です。
 この問題の発生とその後の経過を通じて、本来、女性への差別をなくし、人権を守り、男女平等参画社会を実現していく先頭に立つべき都議会の、女性に対する人権感覚が大きく立ちおくれていることが明らかになりました。都議会として、この問題の重要性を認識し、事実解明と再発防止に取り組むことが緊急課題です。
 このこと抜きに、女性の人権侵害は一掃できません。そのことは、都議会の男女共同参画社会推進議員連盟会長による同様の発言が、議場でないとはいえ、繰り返されたことでも明らかです。
 我が党は、都議会として責任を持って事実解明と再発防止対策、さらに、男女平等参画の推進に取り組むことを皆さんに呼びかけるものです。
 また、再発防止のため、都議会規則に明確に人権侵害発言をしてはならないとする文言を挿入することが必要だと思います。

(この質問に関する知事答弁はありません)

9月24日 民主党 石毛しげる氏
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/proceedings/2014-3/02.html#04

(私たちの運動に関係した質問はありません)

9月25日には、以下の各氏の一般質問がありましたが、こちらにも私たちの運動に関係した質問はありませんでした。
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/proceedings/2014-3/03.html

  • きたしろ勝彦(自民党)
  • 近藤充(自民党)
  • 上野和彦(公明党)
  • 木村基成(自民党)
  • 米倉春奈(日本共産党)
  • 島田幸成(民主党)
  • 山田忠昭(自民党)
  • 相川博(自民党)
  • 中山信行(公明党)
  • 北久保眞道(自民党)
  • 河野ゆうき(自民党)
  • 中山ひろゆき(民主党)
  • ほっち易隆(自民党)
  • 田中朝子(結いと維新)
  • 上田令子(みんな)
  • 山内れい子(ネット)

 全体を通して、東京都のビジョンと2020年のオリンピックに関わる諸課題、また都民の生活や安全を守る防災や各公共サービスに関する質問が多く出されていましたが、その中で公明党 高倉良生氏、日本共産党 畔上三和子氏からの人権、人種差別に関する質問が出た事は、率直に評価出来ると思います。とりわけ高倉氏の質問の中にある「としても人権啓発に積極的に取り組み、国内はもとより、国外に対しても都の人権に対する姿勢をアピールしていく必要があります。その一つとして、例えば、今後、人権に関する都市宣言を発信するなど、人権の分野でも先進都市を目指すべきです」という発言は、都に対して具体的な行動を求める内容となっており、今後の都議会、各委員会での論議を注目して行きたいと思います。