【おことわり】
このページは、ヘイトスピーチ規制に関しての各国の状況を知る事が出来るように、ウィキペディア(Wikipedia)英語版にある「ヘイトスピーチ」のページを、差別反対東京アクションで翻訳しました。翻訳に使用したページは2014/8/10時点のものです。
ヘイトスピーチとは、一般的には、ある個人や集団をその人種、信仰、性別、身体的障害、または性的指向などに基づいて、非難・攻撃する表現のことを指す。[1][2]
法律上ヘイトスピーチとは、それが個人や集団による、もしくは対する暴力的、差別的行動を扇動する恐れがあるか、あるいは個人や集団に対して誹謗中傷、または威嚇する恐れがあるために禁止されているいかなる発言、ジェスチャー、行為、書き込み、表示をも指している。この法律は、保護される個人や集団を、一定の特性に基づいて識別できるものとする。[3][4][5][6] 一部の国においては、ヘイトスピーチの被害者は、民法や刑法、またはその両方で救済を求めることが可能である。ヘイトスピーチの行為が確認できるウェブサイトはヘイト・サイトと呼ばれており、そのほとんどがインターネット掲示板やニュース欄を設けているが、往々にして特定の視点に偏ったものが多い。表現の自由については、インターネットにどのように適用するかをめぐる議論が続いている。
ヘイトスピーチという用語は、対応が遅れていた社会政策への批判に対して、それを黙らせようと急場しのぎでポリティカルコレクトネスを示した、現代におけるニュースピークの例であるとの批評もある。[7][8][9]
目次
- 1 国際的な動き
- 2 各国の現状
- 3 関連項目
- 4 脚注
- 5 外部リンク
国際的な動き
市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)は、「差別、敵意、または暴力を扇動するような国家、人種、または信仰に対する敵愾心の助長・主張は法律で禁止されるものとする」と述べている。[10] 人種差別撤廃条約(ICERD)は、人種差別に関する全ての扇動行為を禁じている。[11] 2011年5月3日、マイケル・オフラハティは国連自由権規約委員会と共同で、ICCPRの一般注釈第34番を公表した。それ(及びその他注釈)によると、ヘイトスピーチの多くの形態は、第20条で制定されている深刻度のレベルには達していないということである。[12] 表現の自由が、インターネット上でどのように適用されるかをめぐる議論については、このようなサイトに関する会議が、国連難民高等弁務官事務所の主催で開催されている。[13]
各国の現状
オーストラリア
主要記事:オーストラリアのヘイトスピーチ法(英文)
オーストラリアのヘイトスピーチ法は管轄によって異なるが、その主な目的は人種差別における被害を防止することにある。
ベルギー
ベルギーの反人種差別法(正式名は人種差別及び外国人嫌悪に触発された特定の行為に対する罰則についての1981年7月30日法)は、1981年にベルギーの連邦議会で可決された反ヘイトスピーチ及び反差別の法で、人種差別や外国人嫌悪を動機とした特定の行為を違法とするものである。ムホー法としても知られる。
ベルギーで1995年3月23日に可決されたホロコースト否定禁止法は、公的なホロコースト否認を禁止する法律である。この法律では特に、「第二次世界大戦時のドイツ国家社会主義政権が犯した大量虐殺を公的に否認、軽視、正当化、または承認する行為」を違法とする。起訴については、ベルギーの機会均等・反人種差別センターが主導となる。違法行為と見なされた場合、最長1年の懲役及び最高2500ユーロの罰金が科せられる。
ブラジル
1988年のブラジル憲法によると、ブラジルでは人種差別やその他の形態の人種に関するヘイトスピーチを、「告発に対して保釈の権利がない永遠で絶対的な犯罪」としている。[14]
カナダ
カナダでは、「特定可能な集団」に対して大量虐殺を提唱[15]、または憎悪を扇動[16]するような行為は、正式起訴犯罪でありカナダ刑法により2年〜14年の懲役となる。「特定可能な集団」とは、「肌の色、人種、信仰、民族的起源、性的指向によって区別されうる民衆のまとまり」として定義される。ただし、(真実の)証言、または公開討論や宗教的教義がテーマの場合は例外として扱われる。女王対キーグストラ(1990)の裁判は、本法律の合憲性を決する非常に重要なものであった。
チリ
「意見と情報、及びジャーナリズムにおける自由に関する法(Ley sobre Libertades de Opinión e Información y Ejercicio del Periodismo)」である第31条は、人種や性別、信仰、国籍を理由として個人や集団に向けて憎悪や敵愾心を推進するために、社会的なコミュニケーション形態を通じて出版や放送などを行う者に対して、高額な罰金を科すると定めている。.[17] この規定は、インターネットを介した表現についても適用される。[18] また、さらに規定があり、それらの動機が差別的な憎悪であった場合、該当する犯罪の刑は加重される。
欧州評議会
欧州評議会は、集中的にこの問題に取り組んでいる。ヨーロッパ人権条約第10条では、欧州人権裁判所(ECtHR)が解釈したように、人道に対する罪、または大量虐殺の否定や最小化といった歴史の否認主義に対する刑法を禁じていない。また、欧州評議会の閣僚委員会はさらに、その勧告R(97)20に基づいてヘイトスピーチの問題と戦うよう加盟国政府に推奨している。ECtHRは「ヘイトスピーチ」に対して共通の認識となる定義を提供してはいないものの、「ヘイトスピーチ」が表現の自由の保護を受ける権利を有するか否かについて、検事が判断する材料(パラメーター)は提供している。[19]
欧州評議会はまた、人種主義と不寛容に反対するヨーロッパ委員会を設立し、イスラム教徒に対する不寛容や反ユダヤ主義への反対を表明する一般政策勧告書や国別の調査報告書を作成している。
クロアチア
クロアチア憲法は表現の自由を保障しているが、クロアチア刑法は、人種や信仰、言語、政治的またはその他の信念、富、出生、教育、社会的身分または他の属性、性別、肌の色、国籍、民族の差異に基づいて、国際社会で認められている基本的人権や自由を侵害する行為を禁じ、処罰の対象としている。[20]
デンマーク
デンマークでは、ヘイトスピーチは禁じられている。その定義は、公的な声明が、ある集団を人種や肌の色、国籍、民族的出自、信念、あるいは性的指向に基づいて、威嚇(trues)、侮辱(forhånes)、名誉毀損(nedværdiges)した場合とされる。[21]
フィンランド
フィンランド語の「ヘイトスピーチ」(vihapuhe)の定義については、かなりの議論があった。[22][23]
フィンランドでは、「ヘイトスピーチ」が民族的な扇動を意味するものと解釈される場合、禁止される。また、それについては刑法11項、戦争犯罪及び人道に対する罪で、公表データ(人種や国籍、民族、信仰、信念、性的指向、身体的な障害、またはそれらと同等な基準に基づいて集団を脅迫や侮辱するような意見、またはその他の声明)として定義されている。民族的な扇動には、罰金刑、あるいは2年までの懲役刑を科すことができるが、仮に(大量虐殺の扇動などで)刑が加重された場合、4カ月から最長で4年の懲役もあり得る。[24]
一部の批評家は、特定の意見や声明に「ヘイトスピーチ」とラベル付けすることで、政治的な文脈において、不都合な意見、あるいは重要な意見を沈黙させ、議論を沈静化させようとしている、と主張する。また、ある政治家、例えば国会議員のユッシ・ハッラ・アホなどは、「ヘイトスピーチ」という用語に、分かりやすい定義がないのが問題だ、と述べている。[23]
フランス
フランスは刑法及び新聞条令で、出生地や民族あるいは民族性の欠如、国籍、人種、特定の信仰、性的指向、身体的障害を理由にした個人や集団に対する誹謗中傷、または差別や憎悪、暴力を扇動するような公的及び私的な情報の伝達を禁じている。法律では、例えばホロコーストのような人道に対する罪を正当化、または否認することを公に宣言することも禁じられている(ゲソ法)。[25]
ドイツ
ドイツでは、Volksverhetzung(大衆の憎悪の扇動)は、Strafgesetzbuch(ドイツ刑法)の130項の下で、処罰の対象になる犯罪であることが規定されており、最長5年の懲役刑に科せられる。刑法130項は、住民の一部に対して公的に憎悪を扇動すること、あるいは住民の一部に対して暴力的で無作為な行動を要求・喚起すること、あるいは悪意を持って(憲法で保護された)人間の尊厳を侵害する方法で、住民の一部を誹謗中傷、及び侮辱することを犯罪と定めている。したがって、例えばある民族集団を、公に「ウジ」「たかり屋」などと呼ぶことは違法となる。Volksverhetzung(大衆の憎悪の扇動)では、それが例え国外で起きた事例でも、非ドイツ人が起こした事例でも、ドイツ領域内で憎悪の扇動が起こったと見なされればドイツ国内で処罰の対象となる。扇動的な感情がドイツ語の書状やスピーチで表現され、それがドイツ国内で入手可能な場合などが例として挙げられるだろう(Strafgesetzbuch(ドイツの刑法)の偏在の原理、9項1節3及び4)。
アイスランド
アイスランドでは、アイスランド刑法第233条aに定められているように、ヘイトスピーチ法は憎悪の扇動に制限されておらず、以下の通り、単に公衆の面前における憎悪表現を含む。
ある個人、または集団に対して、その国籍、肌の色、人種、信仰、または性的指向に基づいて、嘲笑的、中傷的、侮辱的、威嚇的、またはそれに類する方法で、公に攻撃をする者に罰金刑、あるいは最長2年の懲役刑を科すものとする(本文脈における「攻撃」は肉体的なものを意味せず、憎悪の表現としてのみ使用されている)。
インド
言論と表現の自由は、インド憲法第19条(1)により保護されているものの、「インドの主権や整合性、国家の安全保障、諸外国との友好的な関係、公序良俗、良識や道徳のために、または法廷侮辱、名誉毀損あるいは犯罪への扇動に関連して」、第19条(2)の「合理的な制限」を、言論と表現の自由に対して施行することができる。[26]
インドネシア
インドネシアは2006年から市民的及び政治的権利に関する国際規約に調印しているが、ヘイトスピーチ犯罪に対する包括的な法律はまだ公布されていない。しかし、インドネシア国内でも包括的な反ヘイトスピーチ法と関連教育プログラムの整備に対する要求は高まりつつある。その原因となったのが、強硬なイスラム教団の指導者による、バリのヒンズー教徒は「対イスラム戦争」で「扇情的なミスワールド・コンテスト」を保護するために力を結集しつつあるとする発言や、「アッラーの道で戦う者には天国が約束される」という類いの発言だ。これらの発言は、原理主義者の聖職者によって国中のモスクで説かれている憎悪と不寛容のメッセージの一例に過ぎないと言われている。[27]
アイルランド
アイルランドでは、憲法(第40条6.1.i)により、表現の自由の権利が保障されているが、表現の自由を「公序良俗、または国家の権威を弱めるために使ってはならない」という暗黙の了解がある。[28] 1989年憎悪扇動禁止法は、人種や肌の色、国籍、信仰、民族、出身国、トラベラー・コミュニティーの成員、または性的指向を理由に、ある集団に対して国内あるいは国外で、威嚇的、虐待的、侮辱的、または憎悪をかき立てることを意図した、あるいは状況を鑑みて憎悪をかき立てると思われる言動を禁止している。[29][30]
日本
日本の法律は、脅迫や中傷を規制しているが、「特定しきれない漠然とした集団に対するヘイトスピーチは法律の適用外」である。[31] 日本は1995年に、国連の人種差別撤廃条約に加入した。同条約の第4条は、ヘイトスピーチを犯罪とすることを求める規定を明記している。しかし日本では、法的措置が必要とされるほどの人種差別的思想を流布する、または助長する行為がこれまで行われていないとして、日本政府はこの規定に対し留保の立場をとっている。外務省は、この判断は依然として変わっていないと述べている。[32]
2013年5月、国連の経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会(CESCR)は、日本政府に対し、いわゆる「従軍慰安婦」(第二次世界大戦中、日本軍によって強制的に性的奴隷にされたアジア人女性)に対するヘイトスピーチを防止する対策をとるよう警告した。委員会は日本政府に対する勧告で、強制的に性的奴隷にされた女性に汚名が着せられないよう、女性の窮状を日本社会により広く知らしめること、及び女性の損害賠償請求権に対する対応を含め、長期にわたる搾取の影響を修復するために必要な対策を取ることを求めた。[33][34]
2013年、在日外国人、特に韓国・朝鮮人に対するデモや行進が行われたり、彼らに対する暴力行為を示唆する脅しのコメントがインターネットに投稿されたりした結果、ヘイトスピーチは、日本で深刻化している問題として懸念されている。[35][36][37] 安倍晋三首相と谷垣禎一法務大臣は、ヘイトスピーチの高まりについて、「品格ある国家に真っ向から反する」として懸念を表明した。しかし、これまでのところ、ヘイトスピーチをした者に対する法的措置を提案するには至っていない。[32]
2013年9月22日、約2,000人が、最近のヘイトスピーチの行進に反対する運動である「差別撤廃 東京大行進」に参加した。参加者は日本政府に対し、人種差別撤廃条約に「真摯に従うこと」を求めた。行進には性的マイノリティの人々や、身体障害者も参加した。[38]
2013年9月25日、在日韓国・朝鮮人及びその他の在日マイノリティに対するヘイトスピーチに反対する新たな組織「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク(のりこえネット)」が発足した。[39]
2013年10月7日、在日朝鮮人に対する人種差別に係る稀有な判決において、日本の裁判所は、在日韓国・朝鮮人に反対する団体である「在特会」に対し、京都の朝鮮学校に対する「ヘイトスピーチ」による抗議をやめるよう命じ、2009年及び2010年に行った抗議活動に対する損害賠償として、在特会側に1,226万円(12万6,400米ドル)の支払いを命じた。[40][41]
ヨルダン
ヨルダンの法律の中には、対立若しくは憎悪をかき立てる素材の出版若しくは流布の防止を求めるものがいくつかある。[42]
- 市域での宣伝と広告を規制する、2009年法律第76号第6条は、以下のとおり明記している。(a) 以下の行為は本規定に違反するものとみなされる (i) 国民感情、宗教心若しくは公衆道徳を害する素材の宣伝若しくは広告、または公秩序の維持を害する素材の宣伝若しくは広告に加わること。あらゆる個人または集団に対する人種的優位性、人種的憎悪、及び人種差別の扇動に基づく思想の宣伝は、処罰に値する犯罪である。
- 2002年視聴覚媒体法第71号第20条は、以下のとおり明記している。「ライセンシーは、宗派間若しくは民族間の対立をかき立てる可能性のある素材、国家の統一を揺るがす可能性のある素材、テロ、レイシズム若しくは宗教的不寛容を扇動する可能性のある素材、または王国内の関係を傷つける可能性のあるいかなる素材も、放送または再放送してはならない」。
- 1998年印刷及び出版法第8号第7条では、ジャーナリズム及びジャーナリストの行為に適用される倫理規定を定めている。市民同士を対立させる意図を持った、憎悪をかき立てる可能性のある素材、またはプロパガンダとなる可能性のある素材を出版することは違法である。
- 1993年印刷及び出版法第10号第40条(a)(iv)は、国家の統一を危うくする可能性のある記事、犯罪を煽る記事、敵意をかき立てる記事、並びに人々の間に憎悪、分裂、及び不和を助長する記事の出版を禁じることを明記している。
オランダ
オランダの刑法では、ある集団を侮辱すること(第137c条)、並びに憎悪、差別及び暴力を扇動すること(第137d条)の両方を禁じている。刑法に明記されている違法行為の定義は以下のとおり。
- 第137c条:人種、宗教、信条、異性愛若しくは同性愛指向、または身体的・精神的・知的障害を理由に、公然と口頭、文書または描画で、ある集団に対する侮辱を故意に表現した者は、最高1年の禁固刑または第3カテゴリーの罰金刑とする。[43]
- 第137d条:人種、宗教、信条、性別、異性愛若しくは同性愛指向、または身体的・精神的・知的障害を理由に、公然と口頭、文書または描画で、個人またはその所有物に対し、憎悪、差別、または暴力行為を煽った者は、最高1年の禁固刑または第3カテゴリーの罰金刑とする。[44]
2009年1月、アムステルダムの裁判所は、第137c条及び第137d条に違反したとして、オランダ国会議員のヘルト・ウィルダースの起訴を命じた。[45] 2011年6月23日、ウィルダースは、すべての容疑について無罪となった。[46]
ニュージーランド
ニュージーランドでは、1993年人権法のもとヘイトスピーチが禁止されている。第61条(人種間不和)は、「当該集団の肌の色、人種、民族的出自若しくは出身国を理由に、集団に対する敵意をかり立てる、または集団に対して恥をかかせる可能性が高い、威嚇的、攻撃的、若しくは侮辱的な文書若しくは言葉」を出版すること、若しくは流布することを違法としている。第131条(人種間不和の扇動)は、「人種間不和」が犯罪責任に問われる行為を列挙している。
ノルウェー
ノルウェーは、ヘイトスピーチを禁じ、ヘイトスピーチを「肌の色、民族的出自、同性愛指向、宗教または信条を理由に、人を威嚇する、若しくは嘲笑する発言を公然と行うこと、または人に対する憎悪、迫害若しくは侮辱を煽る発言を公然と行うこと」と定義している。[47] 同時にノルウェー憲法は、言論の自由という権利を保障しており、ヘイトスピーチの禁止と言論の自由との正しいバランスについて、公の場や司法の場で、議論が続いている。ノルウェーの裁判所は、ヘイトスピーチ法を限定的に適用しており、1970年の施行以来、同法に違反したとの判決を、ほんの数人にしか下していない。公共の場における言論の自由に関する委員会(1996〜1999)は、ヘイトスピーチ法の廃止を勧告したが、ノルウェー議会は逆に同法を若干強化することを決議した。[48]
ポーランド
ポーランドのヘイトスピーチ法は、例えば宗教的儀式を妨害すること、または公然たる誹謗を引き起こすことにより、信仰の厚い人々の感情を害する者を罰する法である。また同法は、国籍、民族、人種、または信仰している宗教若しくは無宗教であることを理由に、ある個人またはある集団を侮辱する表現を公然と行うことも禁じている。[49]
セルビア
セルビアの憲法は、言論の自由を保障しているが、人権保護のため、一部の事例において、言論の自由を制限している。「民族、人種及び宗教に基づいた憎悪の扇動並びに不寛容の扇動」に対する刑罰は、最低6カ月、最高10年の禁固刑である。[50]
シンガポール
シンガポールは、様々な宗教的集団の間に不和を引き起こす発言を禁止する多くの法律を通過させた。宗教調和の維持に関する法は、そのような法律の一例である。刑法は、人種または宗教を理由に、異なる人種的及び宗教的集団の間で、故意に敵意、憎悪または悪意を助長することを刑事罰の対象としている。また、あらゆる人の宗教的または人種的感情を故意に傷つける行為も違法としている。
南アフリカ
南アフリカでは、ヘイトスピーチは(暴力の扇動及び戦争プロパガンダとともに)憲法にある言論の自由の保護からは明確に除外される。2000年平等促進・不当差別防止法は、以下の条項を含む。
いかなる者も、一つ以上の禁止された根拠に基づいて、以下の意図を明らかに示していると合理的に解釈され得る言葉を、いかなる者に対しても出版すること、広めること、主張すること、または伝達することはできない。
- 感情を害する
- 感情を害する、または悪意をかり立てる
- 憎悪を助長する、または広める[51]
「禁止された根拠」には、人種、ジェンダー、性別、妊娠、婚姻関係、民族的及び社会的出自、肌の色、性的指向、年齢、身体的障害、宗教、良心、信念、文化、言語、並びに出生が含まれる。
Crimen injuria と呼ばれる犯罪(「他者の尊厳を、不法に、故意に、及び深刻に傷つけること」)が、[52] ヘイトスピーチの処罰に適用されることもある。[53]
2011年、南アフリカの裁判所は、感情を害し、悪意をかり立て、憎悪を助長する明らかな意図を示す言論を禁じる南アフリカの法律に違反したとの根拠で、アフリカーナ人をおとしめる軽蔑的な歌「Dubula iBhunu (ボーア人を撃て)」を禁止した。[54]
スウェーデン
スウェーデンでは、ヘイトスピーチが禁じられており、ヘイトスピーチは「民族的集団または人種、肌の色、国籍、民族的出自、信条若しくは性的指向といった属性を有する同様の集団に対して、威嚇する、または軽蔑を表現する発言を公然と行うこと」と定義されている。[55][56] ただし、適切な責任ある議論(en saklig och vederhäftig diskussion)、及び完全に私的な場における発言は禁じられていない。[57] 犯罪となる行為は憲法で制限されており、同様にヨーロッパ人権条約によっても制限されている。[58]
2002年に性的指向に関する条項が追加され、[59] それを適用して、2003年の説教中にヘイトスピーチを行った、ペンテコステ派の牧師オーケ・グリーンに対し、有罪判決が出された。この有罪判決は後に覆された。[58][60]
スイス
スイスでは、人種または民族を理由に、個人または集団に対して、公然と差別をすること、または憎悪を煽ることは、最高3年の禁固刑または罰金刑に処せられる。1934年、バーゼルシュタット准州当局は、儀礼的殺害に対する非難などの反ユダヤ主義のヘイトスピーチを犯罪とした。これは主に、親ナチス・反ユダヤ主義の集団及び新聞、並びにドイツ戦没者埋葬地管理援護国民同盟に対する対応である。[61]
イギリス
イギリスでは、いくつかのカテゴリーに相当する人に対するヘイトスピーチを犯罪とする法律がいくつかある。それらの法律は、憎悪的、威嚇的、攻撃的、若しくは侮辱的なコミュニケーションまたは肌の色、人種、身体的障害、国籍(市民権を含む)、民族的出自、国籍、宗教若しくは性的指向を理由に、ある個人を攻撃するコミュニケーションを禁じている。ヘイトスピーチに対する処罰は、罰金刑、禁固刑またはその両方が適用される。[3][62][63][64][65][66][67] スコットランドでは、主にサッカーの試合を対象とした、宗派に関する憎悪表現に反対する法律があるが、この法律は、人々の信条をからかうことを犯罪とせず、信仰に関して「辛辣な」コメントをすることも禁じていない。[68]
アメリカ
憲法の枠組み
1789年、 合衆国憲法 は三権分立、つまり立法、行政、司法のみを唱え、最後の4条に連邦制の骨格の概要を示した。市民権の保護は最初の憲法には書かれておらず、2年後に発効した憲法修正条項である権利章典によって付け加えられた。1791年12月15日に批准を得た修正第1条は以下の通りである。
連邦議会は、国教を定めまたは自由な宗教活動を禁止する法律、言論または出版の自由を制限する法律、ならびに国民が平穏に集会する権利および苦痛の救済を求めて政府に請願する権利を制限する法律は、これを制定してはならない。
この条項は連邦議会(すなわち立法部)にのみ適用されるが、1868年7月9日に批准された修正第14条は州に対する制約にも及んでいる。
州法の中にも「言論の自由」条項を持つものがあり、特に注目すべきはカリフォルニア州の憲法である。[69]
連邦最高裁判所判例法
表現の自由の制限の中には、立案者から考察されて、連邦最高裁判所で憲法が解釈されるものもある。1942年、フランク・マーフィー最高裁判事は判例法を次のようにまとめた。「ある程度は明確に定義され、制限を受けている言論、妨害および処罰の種類があり、それらは決して憲法上の問題を引き起こすと考えられていなかった。そこには、まさにその発言が危害を加える、または即時の治安妨害を扇動しやすい卑劣で、醜悪で、冒とく的、中傷的、侮辱的な表現、「喧嘩言葉」も含む」[70]
しかしながら、伝統的に、言論が上記の絶対的な例外を1つも含まない場合は、それは保護された言論である。1969年、連邦最高裁判所はクー・クラックス・クランのメンバーの人種差別的な憎悪に満ちた言論を保護し、ヘイトスピーチを容認するための「急迫の危険」の判定が行われた。ブランデンブルグ対オハイオ州の事件において連邦最高裁判所は「言論の自由および報道の自由に対する憲法上の保証は、急迫を扇動する不法行為に対する唱道や、そのような行為を扇動または引き起こしそうな唱道を除き、武力行使または法律違反の唱道を州が禁止または保護をはく奪するのを許可しない」と判断した。[71]
この判定は1969年以来ほとんど修正されておらず、アメリカでは今でも有効な法律である。話者に不法行為を扇動する意向があり、その言論の影響が生じる可能性がある場合、不法行為の急迫な危険を及ぼす言論のみ、法で制限および処罰することができる。
R.A.V.対セントポール市 (1992)訴訟では、白人の人種差別者が黒人家庭の住宅の庭の前で十字架を燃やし、嫌悪を表現する自由の論争が再度持ち上がった。ミネソタ州セントポール市の条例は、このような人種差別的で憎悪に満ちた表現を処罰し、それに従い、この十代の青年は告訴された。アントニン・スカリア最高裁判事は、修正第1条に違反するため、ヘイトスピーチの禁止は違憲であると判決を出した。最高裁判所は条例を取り消したのである。スカリアは喧嘩言葉を次のように解釈している。「喧嘩言葉が明確に修正第1条の保護から除かれている理由は、その内容が特定の意志を伝えるからではなく、話者が伝えたいあらゆる意志を表現する特に耐え難い(そして社会的に不要な)方法を備えているからである」。[72] ヘイトスピーチ条例は表現方法ではなく、表現内容を取り上げているため、これは言論の自由の侵害となった。そのため、最高裁判所は急迫した憎悪による暴力行為につながらない限り、ヘイトスピーチは許容されるという考えを受け入れたのである。[73] 裁判所の意見は「この行為を立証すると、放火や他人の所有物に対する器物破損を禁ずるさまざまなミネソタ州の法を犯しているかも知れない」と示し、法律で保護された種類だけでなく他人への脅迫を含む、その他数多くある中でも、何も告訴にあたらなかった。
2011年、多くのアメリカ人が不快を覚えるプラカードを掲げて抗議する、ウェストボロ・バプティスト教会の権利に関するスナイダー対フェルプスに、最高裁判所は判決を出した。論点は、修正第1条がプラカードに書かれた表現を保護するかどうかであった。判決は8対1で、最高裁判所はウェストボロ・バプティスト教会の創始者フェルプスを支持し、それにより、急迫した暴力を促進しない限りは、ヘイトスピーチの歴史的に見て強力な保護を認めた。裁判所は「言論が地域の政治的、社会的、その他の関心事に関するとは明確には考えられない場合、または広く一般の人々が興味を持つ事柄や国民全体の価値や関心事の問題である場合、表現は社会的関心事を取り扱う」と説明した。[74]
社会的な実施
1964年の公民権法の第7編では、雇用主が従業員の「ヘイトスピーチ」を許容することで起訴されることがある。そのヘイトスピーチが広範な種類の嫌がらせの一因となり、その結果、他の従業員にとって「対立的で不快な労働環境」となった場合である。[75][76]
1980年代と1990年代には、350校以上の公立大学が「スピーチコード」を採用し、教職員や学生の差別的な表現を規制している。[77] このスピーチコードは裁判所では通用せず、修正第1条違反として覆されることはよくある。[78] 公立大学での「ヘイトスピーチ」の規制をめぐる論争は、差別的なスピーチにも及ぶハラスメント防止コードの採用によって再浮上している。[79]
NTIA報告書
1992年、連邦議会は電気通信情報庁(NTIA)に、特定の個人や集団に対する暴力行為およびヘイトクライムの唱道または奨励しているラジオ、テレビ、ケーブルテレビ、パブリックアクセステレビ、電子掲示板の放送を含む電気通信の役割を検討するよう指示した。NTIAの研究部門は、ヘイトクライムが発生する可能性がある嫌悪や敵対感情の傾向を促すスピーチを調査した。研究結果は、憎悪や根強い偏見のメッセージを広めるために放送機関が使われたのは、過去10年間でほんの数例であることを明らかにした。他の例では、ラジオ放送のライセンシーが敵対感情を立証する番組を放送した。少数の大々的に宣伝されたケーブルテレビでは、憎悪や根強い偏見のメッセージを普及させていた。ケーブル番組が地域社会の反応を扇動し、その後、対抗番組が編成されることもあった。1980年代は、さまざまな白人至上主義者やネオナチ主義者の集団によって電子掲示板が設立されたが、多くはその年代の終わり頃には廃れた。また、ヘイトスピーチの「ホットライン」が根強い偏見や敵対感情の録音されたメッセージを伝えるために使われていることや、その電話が個人や組織を威嚇し、脅迫し、苦しめるために使えることも研究が明らかにした。NTIAの調査は、ヘイトメッセージが電子通信媒体で表現されるのはごくわずかであり、最善の反応は政府による検閲や規制ではなく、公教育であることを示唆している。ヘイトスピーチの標的を保護したり、力をつけさせたりする技術と同様に、ヘイトクライムを実行または奨励する電気通信の使用を含む法的手段が論じられている。[80] 評者の一覧表が追加された。
1993年、電気通信情報庁(NTIA)は、“「ヘイトクライムにおける電気通信の役割」という報告書を公表した。この報告書が政府によるヘイトスピーチの最初の定義の1つを下した。[citation needed]NTIAによるとヘイトスピーチとは、
- 暴力行為またはヘイトクライムを唱道または奨励するスピーチ
- 憎悪または敵対感情の傾向を生み出し、それがヘイトクライムを促す可能性のあるスピーチ
メディア上のヘイトスピーチ
2009年1月、メディアで描かれるラテン系アメリカ人のイメージを向上させることを使命とする非営利団体、全米ヒスパニック・メディア連合(NHMC)[81] は、メディア上のヘイトスピーチの問題に対処する3本立ての戦略を明らかにした。1)NHMCはヘイトスピーチに対する調査の申立書を連邦通信委員会(FCC)に提出した。[82] 申立書は、ヘイトスピーチやヘイトクライムにつながる可能性を含む、メディアにおけるヘイトスピーチの程度と影響を調査し、悪い影響を打ち消すような非規制の方法を探るよう委員会に催促する。2)NHMCは電気通信情報庁(NTIA)に1993年の報告書「ヘイトクライムにおける電気通信の役割」を更新するよう求めた。3)NHMCはカリフォルニア大学ロサンゼルス校チカノ研究センター(CRSC)と協力して、この問題について革新的な研究を作り出した。2009年1月には、「民法ラジオにおけるヘイトスピーチ、試験的研究の序論」も発表した。[83][84]
「民法ラジオにおけるヘイトスピーチ」はヘイトスピーチを4つの異なる領域に分類した。
- 虚偽
- 欠陥のある論証
- 不和を生じる原語
- 人間性を奪う隠喩的表現
2010年5月、デジタル時代におけるメディアの未来や地域社会の情報ニーズに対するFCCの措置に対して、NHMCは見解を示した。[85] 全米中の32の全国および地方組織が同意した見解は、メディア上のヘイトスピーチを調査するようFCCに求めている。見解の中でNHMCは、2009年1月に提出したヘイトスピーチに対する調査の申立書にFCCが従う必要性を強調している。
Facebook上のヘイトスピーチ
女性と行動とメディア、The Everyday Sexism Project、100の支援運動団体に属した活動家のソラヤ・シェマリーが参加したキャンペーンの結果、Facebookはヘイトスピーチに関する方針を改訂することに同意した。このキャンペーンは、女性に対する家庭内暴力および性的暴力を促す内容に注目し、5万7,000を超えるツイートと4,900通以上のメールを使って、例えば日産自動車(イギリス)、ハウス・オブ・バーレスク、ネイションワイド・ビルディング・ソサエティー(イギリス)を含む15社の広告をFacebookから撤廃するなどの結果をもたらした。最初、ソーシャルメディアウェブサイトは「無作法で不快ではあるが、嫌悪を表す内容自体は当社の方針に違反していない」と述べて対応していたが、[86] 2013年5月29日に「ヘイトスピーチを特定して、削除する当社のシステムが、特に性別に基づいた憎悪の問題に関して、期待に応えるほど効果的には働いていなかったことが明らかになった」あとで、処置を取ることに同意した。[87]
関連項目
脚注
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外部リンク
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- Reconciling Rights and Responsibilities of Colleges and Students: Offensive Speech, Assembly, Drug Testing and Safety
- From Discipline to Development: Rethinking Student Conduct in Higher Education
- Sexual Minorities on Community College Campuses
- The Foundation for Individual Rights in Education
- Survivor bashing – bias motivated hate crimes
- “Striking the right balance” by Agnès Callamard Article 19
- Hate speech, a factsheet by the European Court of Human Rights, 2013
- Recommendation No. R (97) 20 Committee of Ministers of the Council of Europe 1997